燕窩(えんか)=アナツバメの巣 について
日本では春になると、ツバメが暖かい地域から飛んできて、軒先等に巣を作る光景が見られます。その際、巣に用いるのは泥や藁で、ツバメたちはこれらをうまく組み合わせて巣を作っていきます。
それに対し、東南アジアなどごく限られた地域に生息するアナツバメは、産卵期に発達した唾液腺の分泌物を使い、約一カ月かけて巣を作ることで有名です。
この唾液には、話題の『シアル酸』が豊富に含まれています。
燕窩にはシアル酸が多く含まれている
唾液腺の分泌する粘液は、とくにシアル酸を多く含む糖タンパク質からなっています。
シアル酸の研究は、1936年ブリックスGunnar Blix(1884―1980)がウシの顎下腺からこの物質を単離したことに始まったそうです。
シアル酸は唾液だけでなく、人の母乳やローヤルゼリー(ミツバチの唾液)などにも含まれていますが、アナツバメの唾液には特に多く含まれています。
現在、動物の唾液成分で食品として利用されているのは、ローヤルゼリー(ミツバチの唾液由来)と燕窩(ツバメの唾液由来)のみです。
特に燕窩には、ローヤルゼリーの約200倍、ヒトの唾液の約1600倍の量のシアル酸が含まれているとは驚きですね。
また、ヒトの細胞の表面には、糖が連なって鎖状になったシアロ糖鎖が存在しています。
長い研究で、シアル酸の結合している部分に特定のウイルスなどの異物がくっつき易く、感染や免疫に関わっていることが分かり、抗インフルエンザウイルス薬の開発にも役立てられています。
健康と唾液は深い関係
ストレスを感じたり、緊張するような時には、のどの渇きを感じますよね。
また、加齢で唾液の分泌量が減ると口臭が気になることも。
昔からよだれの多い赤ちゃんは風邪をひかないとか、よだれの多い牛は病気をしないとか言い伝えがありますが、それは、唾液中にはシアル酸の他にも、食物を分解するための酵素、免疫や健康維持に関わる色々な物質も含まれていることからも理解できます。
昔の人は実経験から、健康と唾液が深く関わっていることを感じ、子から孫へと言い伝えてきたのかもしれませんね。